スポーツで活躍するために必要な基本的な動きといえば、「走る」「跳ぶ」「投げる」などを思い浮かべると思います。
これら基本的な動きの土台となる能力をコーディネーション能力といいます。
コーディネーション能力は、体を思い通りに動かすための7つの要素(バランス能力や反応能力)から構成されており、そのひとつに「リズム感」があります。
「え?リズム感」と思われるかもしれません。
音楽やダンスではリズムが重要というのは直感的にわかると思いますが、スポーツ全般に必要なのか疑問ではないでしょうか。
実はリズム感はあらゆるスポーツの動きに関わっている大切な力なのです。
「リズム感」とは、音楽的なセンスだけを指すのではありません。スポーツにおけるリズム感とは、自分の体の動きのタイミングやスピードを上手にコントロールする力のことです。
たとえば、走る・止まる・跳ぶ・投げるといった基本動作を、状況に応じて“どのタイミング”で“どれくらいの速さ”で行うかを調整できる能力と言えます。
試合中、ただ速く動くのではなく、ゆるさと速さ、いわゆる「緩急」を使い分けることが重要です。
たとえば、バスケットボールやサッカーで一度ゆっくりドリブルして相手の様子を見た後、急に加速して抜き去る──これもリズム感があるからこそできるプレーです。
格闘技においても、一瞬の「ため」や「間」を作ることで、相手の動きを見て判断する余裕が生まれます。
スポーツ実況でも「独特のリズム」「タイミングを読む」といった言葉をよく聞くことと思います。
リズム感が優れていると、動きに“ノリ”が生まれ、相手にとっても読みづらく、スムーズなパフォーマンスが可能になるのです。
南米の選手など独特のリズム感を持っていて、動きが読みづらいと聞いたことはないでしょうか。
逆に相手の動きのリズムや癖を読むことで、攻撃を当てたり、ボールを奪ったりと優位に動くことが可能となります。
つまり対人のスポーツにおいては、リズムの取り合いが行われていると捉えることができます。
タイミングという観点でいうと仲間との連携におけるリズム感と、動いている道具との連携におけるリズム感が大きく関わってきます。
チームスポーツでは、自分だけでなく仲間やボールとの“タイミング”を合わせることが必要不可欠です。パスをもらう、連携プレーをする、ボールを打つ・蹴るといった動作は、リズムがずれると成功しません。
サッカーやバレーボール、野球などでは、ボールが来るタイミングを“感じ取る力”が求められるため、リズム感がプレーの精度を左右します。
リズム感があると、複数の動きを“滑らかに”繋げることができます。たとえば、陸上競技のハードル走では、走る・跳ぶ・着地してまた走る、という動きを一定のテンポで繰り返す必要があります。このテンポがずれるとリズムが崩れ、ミスにつながります。短距離走においても、スタート直後と中盤の最大加速部分、そして終盤と足の回転(リズム)を使い分けます。
ハンマー投げの室伏広治選手の過去のトレーニング映像を観たことがありますが、ハンマーを軌道に乗せるまでに、どのリズムでハンマーを回し始めるのかを試行錯誤していました。
また、柔道や柔術などの組技でも、技をかける一連の流れには相手の動きとの「呼吸(タイミング)」を合わせる力が不可欠です。
リズム感が育つことで、ただ動作がうまくなるだけでなく、全体の流れをつかむ力や状況判断力も磨かれます。
プレーのテンポを「感じ取る力」があると、焦らず落ち着いて行動でき、より正確で効果的なプレーを選択できるようになります。
このようにリズム感はスポーツをするうえで、そしておそらく全てのスポーツにおいて重要な要素です。
リズム感は先天的なものではありません。
リズム感も他の運動と同じく、日々の遊びや運動の中で育てることができます。
ここでは、家庭でできる簡単なものをいくつかご紹介します。
保護者が「パン・パン・パパン!」などのリズムを叩き、子どもが真似して再現します。慣れてきたらテンポを速くしたり、複雑なリズムに挑戦!
一番身近なものは、伝統的な手遊びがあります。たとえば「グーチョキパーで何作ろう」の歌に合わせて手拍子をするのも、リズム感を養うことができます。
アルプス一万尺をしてみましょう。リズムを取るのが苦手な子は、ともすれば速く行おうとします。リズムを落として「待つ」ことを意識するとリズム感が育まれます。
スキップは「右・右、左・左」と交互にリズムよく跳ねる全身運動です。足だけでなく、腕の振りや体のバランスも使うのでリズム感と全身協調性を同時に鍛えられます。
しりとりをしながら足ふみを一定のリズムで続ける遊びです。「言葉を考える」ことと「動きを続ける」2つの課題を同時にこなすことで、リズムのキープ力が高まります。
こういった運動をマルチタスクの運動といいます。先述の手拍子リズムゲームでも、手拍子をしながら足を開く閉じるという動作を加えると、より難しく面白くなります。
リズム感は、技術の上達や試合での動きに直結するだけでなく、集中力や判断力の向上にもつながります。特に幼少期の「遊び」や「全身運動」を通して楽しく鍛えることで、将来的な運動能力のベースをしっかり築くことができます。
「リズム感」はセンスではなく、習慣で育てられる力です。ぜひ、今日からおうちで気軽にリズムトレーニングを取り入れてみてください!
バク転の習得を通して、子どもたちの未来の可能性を広げることを目指しています。バク転習得に向けた身体作りをサポートする各種資格を持っています。
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