「昔はもっと厳しかった」「最近の子は打たれ弱い」
現場に長く立ってこられた指導者の皆様であれば、そう感じる場面は少なくないと思います。
「厳しく指導してやってください」
そう言う保護者の方もいます。
実際、かつての厳しい指導環境からも、多くの優れた選手が育ちました。
しかし、スポーツ科学は日々アップデートされていて、近年は厳しい指導だから名選手が育ったわけではない、と言われてます。
一方で、同じくらい素晴らしい才能を持ちながら、威圧的な指導によって上達の機会を奪われて消えていった選手がその裏に数多く存在することも分かってきました。
見えてきたのは、「怒鳴って動かす指導」というものは、一部の極めて強い子には通用しても、多くの子供たちにとっては、上達のスピードを著しく遅らせてしまう「非効率なもの」だったということです。
怒鳴る、威圧する、追い込む。
こうした指導は、その場では選手を動かす力があります。
しかし、脳科学の視点で見ると、恐ろしい事実が見えてきます。
人間は強い恐怖を感じると、脳の「扁桃体(へんとうたい)」という部分がパニックを起こします。
すると、スポーツに最も必要な「自分で判断する力」や「新しい動きを覚える力」を司る部分(前頭前野)が、活動を止めてしまうのです。
これは100年以上前から提唱されている法則(ヤーキーズ・ドットソンの法則)でも証明されており、「適度な緊張は良いが、過度なストレスは逆効果」なのは、勝負の世界の鉄則です。
「厳しい環境でこそメンタルは鍛えられる」というのは誤解です。
現代のスポーツ心理学において、メンタルの正体は「耐える力」ではなく、「自分ならできる!」という確信(自己効力感)のことです。
この「根拠のある自信」を育てる方法は、「小さな成功体験」を積み重ねることです。
少し高い目標を設定し乗り越えさせることで、自信や精神的な強さを獲得させていくのです。
逆に、「お前はダメだ」という否定的な言葉や、できないことをやらせる失敗の繰り返しは、選手の心をへし折り、立ち直る力を奪ってしまいます。
メンタルを強くするとは、選手を叩くことではなく、「できると思える状態」を設計してあげることなのです。
「俺たちの代は、あの厳しさで強くなった」
確かにそうです。
しかし、それは皆様が「偶然、その厳しさに耐えられる特別な精神力を持っていた」からに過ぎません。
これは「生き残りバイアス」と呼ばれます。
その裏には、指導者が少しアプローチを変えていれば、世界に羽ばたいたかもしれない「消えた才能」が山ほど眠っています。
今の時代、子供の数は減り、スポーツの選択肢は増えています。
厳しさで選手を「選別」してふるいにかけるのではなく、今いる選手を一人も漏らさず「戦力」に変える。
これこそが、チームを強くするための最も合理的な戦略です。
かつては「練習中に水を飲むな」が常識でした。
しかし今、それをやれば選手を壊すだけで、勝負には勝てません。
指導法も全く同じです。
例えば、「できた瞬間を逃さず褒める」「課題を細かく分解して教える」。
これらは甘やかしではなく、運動学習の理論に基づいた「最速で上達させるための技術」です。
実際に、世界のトップチームはすでに大きく変わっています。
これらに共通するのは、「怒鳴らなくても、選手が自ら勝ちたくなる仕組み」を指導者が作っているという点です。
ここで重要なのは、厳しさを否定することではないということです。
本当に必要なのは、指導者の感情をぶつける「感情的な厳しさ」から、勝つために計算し尽くされた設計された厳しさへのアップデートです。
今の子供たちは、昔に比べて選択肢がたくさんあります。
嫌になればすぐに別の場所へ行ってしまいます。
だからこそ、私たち指導者に求められているのは、安心してスポーツに取り組み、上達を実感できる、一段上の指導技術です。
皆様が長年培ってきた「情熱」や「根性」を否定する必要はありません。
その熱い想いをアップデートして、現代の「科学」という武器と組み合わせる。
それこそが、今の子供たちを強い選手へと導く、指導力ではないでしょうか。
バク転の習得を通して、子どもたちの未来の可能性を広げることを目指しています。バク転習得に向けた身体作りをサポートする各種資格を持っています。
・NESTAキッズコーディネーショントレーナー
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